Hyper-Positive-Diary

TWICE/遊戯王/バイオインフォ/読書記録/アニメの感想等を走り書きします。

【測度論】測度空間と完備性

体積とは、ユークリッド空間における領域に、実数値を与える写像で。 同様に、測度とは、一般の集合に実数値を与える写像です。 測度が、完全加法族上で定義されることを、以前別の記事で学びました。

slmnphmet1-2.hatenablog.com


本記事では、測度空間に どのようなものがあるのかを学びます。

そして、後に登場する外測度と測度の関係を理解するために、 測度空間の完備性という概念を導入します。

それでは早速。

測度空間の例

ここでは、 集合 XXの集合族\mathscr{X}\mathscr{X}上の測度 \muからなる対を、  (X, \mathscr{X}, \mu)と表現し、「測度空間」と呼びます。

測度空間の例をいくつか示します。

確率空間

 \mu(X)=1の時、 \mu確率測度、 測度空間を、確率空間と呼びます。


ポアソン分布を例に、確率測度と確率分布の関係考えてみましょう。 ポアソン分布に従う確率変数は自然数 \mathcal{N}ですから、  X= \mathcal{N}となります。 また、\mathscr{X}は、 「 \mathcal{N}の部分集合の全体」となります。

この時、 E \in \mathscr{X}に対して、以下のようにおきます。

 
\displaystyle{
\mu(E) =
\sum_{n \in E}^{} p_n \\\\
p_n = \frac{ \exp {(- \lambda)}  \lambda^{n} }{ n !}}


二本目の式は、 見慣れたポアソン分布の確率質量関数ですね。


実はこの時、 \muは、測度となっています。 測度の定義は以下を適宜参照してください。 slmnphmet1-2.hatenablog.com また、

 
\displaystyle{
\sum_{n \in \mathcal{N}} p_n = 1
}


であり、全空間の測度が1であることから、 確率空間であることも確認できますね。

ディラック測度

ある集合 Xに対して、 E \subset  x_0 \in Eを考えます。 この時、


\mu(E) = 
\left\{
 \begin{array}{}    
1 &  (x\_0 \in E) \\\\     
 0 &\ (x\_0 \notin E) 
\end{array}
\right.

 \muを定義すると、X、Xの部分集合の全体 \mathscr{X} \muの3対は測度空間となります。 また、この時の \muを、ディラック測度と言います。

この測度空間もまた、確率空間となっています (ディラック測度で、E内とE外の測度の和が1になることから明らか)。

数え上げ測度

 X = \mathcal{N}\mathscr{X}は、「 mathcal{N}の部分集合の全体、  \mu(E)を、Xの部分集合Eに含まれる自然数の数とすると、 これら3対は、測度空間を成します。

また、この時の \muは、数え上げ測度と呼ばれます。

これらが測度空間になることは、 集合族が完全加法族であることと、  \muが測度としての定義を満たしていることから確認できます。

完備な測度空間

集合[tes: X]と、 X上の完全加法族 \mathscr{X}、測度 \mu が、 完備な測度空間であるとは、「 零集合( \muによって「0にうつされる集合)すべての部分集合が、 完全加法族 \mathscr{X}の要素である 」 ときを言います。


数学の言葉で厳密に定義すると以下のようになります。

 E \in \mathscr{X}かつ、  \mu(E)=0ならば、  F \subset E なるすべてのXの部分集合Fに対して、  F \in \mathscr{X}


 F \subset E \in \mathscr{X} ではありますが、 F \in \mathscr{X}が必ずしも 成り立つとは限りません(想像しにくいけど)。

完備性は、後に導入する「ルベーグ測度」 の性質を知る上で大切です。 この機会に頭に入れておくと、 のちの理解のためになるかと思います。 ではまた!

【測度論】外測度の定義と測度の構成~式とイメージによる理解~

前回、完全加法族を導入し、 「測度」というものを定義しました。

slmnphmet1-2.hatenablog.com

今回は、「外測度」を定義し、 ある条件下の外測度が、測度になることを学びます。

外測度の定義

 \mathscr{F} (X) を、 X上の部分集合全体からなる集合族とします (集合族については、前回の記事を参照ください)。 この時、写像  \nu \ : \mathscr{F}(X) \rightarrow [0, \infty ] が外測度であるとは、次の性質を満たす時を言います。

(i).   \nu (\phi) = 0

(ii).   E \subset F ならば、 \nu (E) \leq \nu (F)

(iii). Xの集合列、 
\displaystyle{
E_1,  E_2, \cdots, E_{\infty}
}
に対して、 
\displaystyle{
\nu \left(
\bigcup_{j=1}^{\infty} E_j
\right)
\leq
\left(
\sum_{j=1}^{\infty} \nu(E_j)
\right)}

これも、測度と同様に、集合に「体積のようなもの」を定義するための枠組みです。 (i)は、空集合に体積がないことを表しています。 (ii)は、大きな集合の方が体積(外測度)も大きいということを表しています。 (iii)は、「和集合の体積(外測度)」は、「体積(外測度)の和」であることを表しています。

 \nu可測集合

ある X上の外測度 \nuがあったとします。  Xの部分集合 Eが、 「 \nu可測」もしくは、 「 \nu可測集合」であるとは、 以下を満たす時を言います。


\forall
A
\subset X, \ \
\text{st.} \ \
\nu(A)
= \nu(A \cap E) + \nu(A -  E)

st以下が言わんとしていることは、  Aの体積(外測度)は、  A Eの共通部分の体積(外測度)と、  Aから A Eの共通部分を引いた部分の体積(外測度) の和」であるということです(逆にややこしい)。 「」内の主張が、 Xのどんな部分集合 Aについても成り立つとき、 A \nu可測となります。

下線部を図で説明すると、 f:id:slmnphmet1-2:20200410011146p:plain

このようなイメージです。例えば2次元のユークリッド空間において、 「体積」を「面積」に置き換えて考えれば、 下線部の主張は、 ごくごく当たり前のように見えます。


しかし、ユークリッド空間を離れた一般の集合で、 体積ではなく外測度を考えている場合には、 必ずしも成り立つ主張ではありません。


一般人が体積をイメージできるのは、概ねユークリッド空間の中ですが、一度ユークリッド空間を離れると、一般人が想像だにしない現象が起こります。測度論の難しくも興味深いところですね。

外測度による測度の構成

外測度と、 \nu可測の概念がわかれば、 完全加法族という言葉を使わなくても測度を定義することができます。


 \nuを外測度とします。 今、 X \nu可測集合の全体を \mathscr{M}とおきます。この時以下が成り立ちます。

  1.  \mathscr{M}は完全加法族である。
  2.  E \in \mathscr{M}に対して、  \mu(E) = \nu(E) と定義すると、 \mu \mathscr{M}上の、完備な測度である。

一言で言うと、「 \nu可測集合における外測度は、完備な測度」ということです。測度空間の完備性については、後日別の記事で紹介予定です。

また、この定理の証明は、行程が複雑なため、これもまた別の記事で紹介予定です。


まだ、外測度が何者なのかイメージがつかみにくいと思います。 次回は、「拡張」と言う概念を用いて、外測度と測度の関係について、より理解を深めていきたいと思います。

【読書記録/レビュー】『成功する人は偶然を味方にする--運と成功の経済学』~あなたを謙虚にさせてくれる一冊!~

いよいよ、全国7都道府県で、コロナウィルスに対する緊急事態宣言が出されました。 外出自粛の中、私たちに残された娯楽は何でしょうか。料理をするもよし、自重で筋トレをするもよし、 家族と団欒するもよしです。


基本、政府の方針通りにしていれば、 家で楽しく、何をしていてもいいと思います。 ですが僕としましては、先の見通しが立たずおぼつかないご時世ですから、 本を読んで将来に投資をしようと思う今日この頃です。


さて、今回は、経済学者、ロバート・H・フランクの 著書『成功する人は偶然を味方にする--運と成功の経済学』 をご紹介します。


成功する人は偶然を味方にする--運と成功の経済学【電子書籍】[ ロバート・H・フランク ]

成功を決める要素とは何なのか。 運が成功に影響することを認めると、どんないいことがあるのか。 そしてそれは世界をどのように変えて行くのかについて、 本の内容をかいつまんでご紹介します。

気になった方は是非書店で手に取ってみてくださいね!

筆者の瀕死体験 ~些細な偶然が人生を変える~

友人とテニスをしていたロバートは、急性心不全で突如意識を失い、倒れてしまいました。 友人は心肺蘇生を行い、救急車を呼びました。 8キロ離れた町から来たはずの救急車は、予定よりもかなり早く、ロバートの元に到着したと言います。


この日は偶然、 テニスコートの近くで事故が2件あり、 救急車が2台出動していました。

そしてさらに偶然なことに、 事故のうちの1件は重傷者がいませんでした。 そのため現場を離れた救急車が、 友人の連絡を受け。 近くのロバートのもとに訪れたということでした。


作者ロバートはこの経験を通して、 「運」について関心を持つようになりました。 運が人生に大きく影響することを知ったのです。


そして、とりわけ人生の成功には、才能や能力にも増して、 運が必要不可欠であると考えるようになります。


最も成功している人が、最も能力のある人だとは限らない

才能や努力は、成功に不可欠な要素でしょう。 成功者の多くは素質に満ち溢れていて、努力家であることは間違いありません。 しかし才能や努力があっても、 運なくしては、才能溢れる努力家たちの集団内で、 勝ち上がることができないと作者は言います。

その根拠を示した二つの実験をご紹介します。


シミュレーション実験

成功が能力と努力だけでなく、 「運にも影響する」ことを示したのが、 コンピュータによる次のシミュレーション実験です。


・「運」、「能力」、「努力」を表す数字を、0~100までの数字の中からランダムに決める。
・「努力」と「能力」は同じ重み、「運」には少ない重み。
・「パフォーマンス」はこれらの加重平均。
・パフォーマンスが最も高い人が勝者となる。
・このシミュレーションを繰り返し行う。

例えばこのシミュレーションで、運の重みを20%、参加者を10000人に設定すると、 およそ90パーセントの確率で、「最も能力(=努力+能力)の高い」わけではない人が優勝しました

パフォーマンスが、運と能力と努力の加重平均で決まるという単純なモデルではありますが、 このモデルは、「最も成功している人は、最も能力のある人だとは限らない」ことを示しています。


ヒットがヒットを生む

社会学者のダンカン・ワットは、「ミュージックラボ」と呼ばれる実験を行いました。 この実験では、48のインディーズバンドの名前と代表曲を載せたウェブサイトを使います。


まず、被験者は、他の参加者のダウンロード履歴が見えない状態で、 48のインディーズバンドの代表曲から好きな曲をダウンロードします。

この時、48曲のうち、大半の曲で評価は割れていました。 大好きと評価する人がいる一方、 いまいちと評価する人もいます。


その後、同じ48の曲を載せたウェブサイトを、独立にそれぞれ8つ作りました。 今回は、それぞれのサイトで、 各曲のダウンロード数を見れるように設定します。

その結果、驚くべきことに、 曲の最終的な人気は、初期にダウンロードした人の評価次第だということがわかりました。 初期にインディーズバンドを聞いた人たちが選んだ曲にハロー効果が働き、 他社もダウンロードをして、一層その効果が強まるのです。


ヒット曲は、ヒット曲なりの売れる理由がもちろんあるでしょう。 しかしこの実験をもとに推論を行うならば、 ライバルとなる曲が同じくらい魅力的であるような環境においては、 影響力のあるリスナーに、「 たまたま」気に入ってもらえた曲やアーティストがヒットすると考えられます。


運に感謝するメリット

成功が、能力だけでは決まらず、ささいな運にも左右されるのだとしたら、 成功者は「運」に感謝すべきです。 運に感謝することには大きなメリットがあります。


著者は、上記のようなことを示す為に、オンラインである実験を行いました。


その実験では、架空の実業家「ジョンソン」のインタビューを、2パターン用意します。 1つ目は、ジョンソンの成功、努力と能力によるものだとする「能力バージョン」、 もうひとつは、自身の成功が、偶然の積み重ねだとする「幸運バージョン」です。

すると、幸運バージョンのインタビューを読んだ学生の方が、 能力バージョンを読んだ学生より、 「ジョンソンと友人になりたい」と答えた人数が 圧倒的に多いという結果になりました。

運に感謝するということは、 能力に対する自負を持っているだけの人と比べて、 人に好感を持ってもらいやすくなるのです。

そして、成功とは往々にして他社からの評価によって決まります。 他社から好感を持たれている人は、 他社からの評価も高くなりやすいということです。

しかし、一般的な人はその逆で、 「成功は能力のせい、失敗は不運のせい」と思ってしまう傾向にあります。 そう思うことで、確かに努力するためのモチベーションを確保することはできます。 しかし、そのことが他社からの評価を下げ、 結果的に成功から遠のいている、 ということも少なくないはずです。

成功者が、運に感謝することで...

成功者が、自信が成功できた理由は、運やチャンスに恵まれたからであると考えることで、 世界はもっと豊かになると筆者は述べています。


政治学者のロバート・パットナムは、所得格差の拡大によって、 低所得世帯の子供たちのチャンスが奪われていることを示しました。 経済的な成功を収めるには、大学に進学せねばなりませんが、 近年その大学にかかる費用が大きくなっています。 そのため、優秀ではあるが低所得階級に生まれたため、 その成功のチャンスを断念できない人たちがたくさんいます。


このような人たちは、 生まれた場所という「運」に 恵まれなかった人たちです。


一方、現在の成功者たちの多くは、上記で示した通り、 能力だけでなく、運に恵まれた人たちです。


このような成功者が、自信の成功における「運」の影響を認め、 それに感謝し、「運」に恵まれなかった人たちに、 公共投資という形で支援をすることで、 世の中はもっと良くなると、筆者は結論づけています。

最後に

『成功する人は偶然を味方にする--運と成功の経済学』、いかがだったでしょうか。


この本で特に大切にしたいと感じたメッセージは、 「成功は能力だけでは決まらない」、 「運に感謝することが成功への近道」です。


人は傲慢な生き物ですから、自分が頑張ったから成功できたんだ!と思いたくなってしまうのもです。 でもそれは、経済学的に見れば、運の要素も多分に絡んでいて、 それに気づき感謝した方が、人に好かれて更なる成功に繋がりやすいのです。 何か物事がうまくいって、傲慢になりかけてしまったとき、 是非この本を手に取ってみてください。 きっと謙虚な自分に引き戻させてくれるはずです。


この本に巡り合えた「運」に感謝して、この記事を締め括りたいと思います。

大学院に入って良かったことまとめ

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3/23を持って、東京大学農学生命科学研究科・生産環境生物学専攻(名前長い)を、無事修了致しました。

学部で卒業した友人が、金銭的に余裕を持って遊んだり、美味しいものを食べている様子を見て、「学生をさらに2年続けるなんて、お坊さんの1000日修行を500日くらい延長するようなものでは?」と感じたことがあります。わざわざこんな苦行をする意味はあるのかと気もを抱えたまま研究していたこともありました。

しかし、いざ修士生活が終わってみれば、 どことなく寂しさのようなものが拭えません。 絶妙にセンチメンタルな自分がいることに、正直驚いています。 きっとこの気持ちは、 他の場所では得難い経験を、この2年間で得ることがで来た証拠でしょう。

今回は、そんな思いが冷めやらぬ間に、 大学院修士生活の2年を振り返り、 僕が大学院でどんな財産を得たかを、まとめてみようと思います。

アカデミアとビジネスの違いを知れた

なんと言っても、これが大きい。

アカデミアで研究をする傍ら、計3社で1ヶ月以上の長期インターンシップを経験しました。 部活動やサークル等の、学業とは異なる居場所が欲しくて始めた意味合いが大きいように思います。

昼はアカデミアで研究に勤しみ、夜時間がある時は長期インターン。 このような生活を繰り返していると、「アカデミア」と「ビジネス」の 大きな違いが浮き彫りになってきました。

ビジネス

Fintech系とバイオベンチャー、4月からの就職先の3社ですが、3社とも、役に立つ仕事の量が、評価の軸でした。資本主義においては、取引相手に「役に立つ」ものを提供できなければ、生き残れません。少し考えれば当たり前のことですが、ビジネスの世界は、会社への貢献度が全てなのです。

仕事に集中していない時や、ミスを連発した時はめちゃくちゃ怒られました。 これは、「役に立つ」成果を発揮していないので、当然の帰結です。

しかし、社員さんの手が届かない作業のお手伝いを率先して行うと、 逆に可愛がってもらえるようになりました。

企業やビジネスの世界では、 なるべくミスをせず、目の前の作業に尽力し、 その傍ら、他の社員さんの手が届かない作業に勤しむ。 こうすることで「役に立つ」というパラメータを最大化し、 貢献度を上げることができることを学びました。

アカデミア

一方大学院では価値観が大きく異なります。

研究室にとって役に立つことだけしていても、卒業できるとは限りません。 極端なことを言えば、ティーチングアシスタントに積極的に取り組んだり、教授に頼まれた解析を手伝ったり、先輩が実験のために育てた作物の手入れをしても、「卒業論文」を書かねば、卒業できません(当たり前)。

逆に、理論に大きな穴もなく、新規性のある話題で、 サイエンティフィックなお作法にのっとって、論文を書けば、 誰かの役に立っていなくても、 アカデミアでは称賛を得ることができるでしょう。

強いて言うならば、組織への貢献ではなく、 サイエンスへのインパクトが評価の基軸になっています (企業との共同研究となると話は別です)。

アカデミアとビジネスのどちらが良いか、 そんな議論をするつもりは毛頭ありません。 しかし、どちらの世界にも片足を突っ込んだことで、 どちらの立場の人の気持ちも、 ある程度わかってあげられる人間になれたのではないかと思っています。

体系だっていない知識を体系化する術を学んだ

幼稚園・小学校に始まり大学の初等教育まで。 およそ20年間。 僕たちは「体型だった知識」を学び続けてきました。

例えば、社会でであれば、縄文時代弥生時代から始まり、 一連のストーリーとして日本史を学ぶことができます。 土器や稲作をはじめとする文化が、どのように未来に影響を及ぼしたか、 年代を追いながら勉強することができます。

義務教育の枠組みの中で、平安時代を勉強してから、 奈良時代に遡って学んだという人は極々少数のはずです。

しかし研究生活では、そんなことが頻繁に起こります。

例えば歴史の例ですと、 最初に平安時代について勉強し、 「文化的背景のつながりで、気になることがあったから、奈良時代について書かれた文献を調査しよう」といった具合で、 提供されたわけでない過去の知識を、 自分で掘り起こさねばなりません。

また、順番だけでなく、 知識同士のひも付き方が、不透明なことも多いです。

例えば自分が研究している分野に明るくない段階では、 最新の論文を読んで分からないことが、本当にたくさん出てきます。

しかもその分からないことが、「どこを見ればわかるか」さえ分からないこともあります。分からない場所に引用文献がreferされていたとしても、その引用文献に飛ぶと、分からないことがさらに増えるなんてこともあります。

最初の疑問が完全に解消されるまで、何ヶ月もかかることもありましたし 、解消されないまま卒業することになってしまった問もたくさんありました。

しかし、このような環境にいたからこそ、 知らないものを一から学び、 体系立てた知識を構築する力を養いました。 教科書を与えられなくても、自分で情報を収集し、 具体化・抽象化することで、自分に最適な教科書を作ることができます。

生きるとは学習の積み重ねです。 死ぬまで学習から逃げることができないのだとしたら、 この力は研究だけでなく、 今後の人生の様々な場面で生きるものだと確信しています。

すごい人たちがすごくなっていく過程を知った

この二年間は、日本の中でもトップレベルに優秀な人達と話す機会に恵まれました。

東京大学には「総長賞」と言って、 学業や課外活動において優れた成績を収めた学生に、特別な賞が贈られます。学業部門は特に、学部生から博士過程の全東大生が対象であり、その中で10人に満たない選ばれた者のみが受賞する賞です。

この賞を、2年前に、1〜2年生で同じクラスだった友人が受賞しました。また、今年度においては、同じ学科かつ同じ研究室だった同士と、インターン先の後輩が受賞しました。しかも後輩の彼は総長大賞という、総長賞の中でも特別な賞です。

また、理学部物理学科のトップを張る友人たちとも仲良くなりました。 数理系が強い彼らは、特に賢く見えました。

そういえば、今巷を騒がせている河野玄斗とも、体育のクラスが一緒でした。

彼らは間違いなく、日本でトップレベルの学生です。そんな彼らとと知り合えただけでも財産なのですが、知り合えたこと以上のメリットが僕にはありました。

それは、彼らが「すごくなっていく過程」を知れたことです。

みんなもともと賢いし、かなりの下積みがあるとは思うのですが、研究のネタや方針で頭を悩ませていたり、時間に追われて焦っている時もありました。

全て完璧にこなす逸材ゆえの成果というよりは、 目の前のことに真摯に取り組み、 一歩一歩前進してきた結果であるように、 僕の目には映りました。

その一歩一歩が、学会での発表や、 投稿論文の執筆に繋がり、 みんなから「すごい」と目に見えてわかる高さまで積み重なっていったのだと思います。

元々優秀な彼らですら、 積み上げることで「すごく」なっているのだとしたら、 僕は余計にのうのうと生きていてはいけません。

時間の使い方や物事の優先順位にもシビアになって、 「今できること」を着実に積み重ねていかなくてはなりません。

そう思わせてくれる友人に出会えたことは、 僕にとってきっと東大でしか手に入らない、 貴重な貴重な財産だったと思います。

最後に

この4月から、社会人として新たな人生をスタートしました。 全く違う世界で生きていくことになるわけですが、 修士生活の2年間で得たもの、これからも忘れずに持ち続けたいと思っています。

本記事が、大学院進学を考えている人の決断の手助けになることを願います。

【読書記録/感想】國分利治の地道力がすごい!~誰でも自己投資がしたくなる本!~

首都封鎖がさわがれる中、外出して活動する機会が減りました。 引きこもり生活がとてもはかどっております。 この機会に読書を習慣づけられたらなと思う日々です。

さて今回は、美容院「アース」の創業者として知られる、國分利治さんの自叙伝、『地道力』について紹介したいと思います。

この本では、アースを世間に知らしめるまでに、國分さんが積み上げてきた努力が語られています。のうのうと生きてたらダメだ、と読み手側が強く自覚させられる名著です。これを読んだ人は國分さんのエネルギーに背中を押され、きっと今すぐ自己投資がしたくなるはずです。

地道力新版 目先の追求だけでは、成功も幸せも得られない! [ 國分利治 ]


感想(1件)

とてもコンテンツが濃い本ですから、全て内容を紹介し切ることは不可能です。

今回はこの本で取り上げたいいくつかの項目を抜粋して、紹介していきたいと思います。

休まず働け

20歳だった國分青年は、当時付き合っていた彼女に、「25歳までに社長になって迎えにくるから、待っていてくれ」と言い残し、地元福島から離れ上京し、歌舞伎町の美容院で、住み込みの見習いとして働き始めました。当時は髪を切った経験もなく、美容師として全くのど素人。その自覚があった國分さんは、元旦以外の休みの日を返上し、10年以上、休まず働き続けたと言います。

そうすると、周りの目が変わってきます。あいつは「休まない派」の人なんだと、一目置かれるようになります。さらに、「休む派」の人に対して、「俺は休まない派」なのだと自信が持てるようになります。

休まないことで成長が速いだけでなく、周りから一目置かれる上に自信が持てるようになる。これはきっと成功の正のスパイラルにハマっていて、努力が楽しくなる状態のはずです。

闇雲に頑張ることが、否定されがちな昨今の風潮の中で、「休まず働く」ことは、他人との差別化を図る上で重要な要素になるかもしれません。社会人になって停滞間にまみれてしまった時は、もう一度この本を手に取ってみたいものです。

自分が「原因になれ」

國分さんの理論で眼から鱗だったのが、「原因」・「結果」・「条件」の理論です。

「原因」があって「結果」があります。しかしその間には、「条件」が介在しています。そして条件には、人、モノ、金という3つの「要素」があります。

ここで、「自分」とは、原因・結果・条件のどこに入っているでしょうか。

自分は、「原因」に含まれます。

そして一般人は、「結果」を「原因」ではなく「条件」のせいにしがちだと言います。例えば、

「 店が流行らないのは立地が悪いから(条件=モノ)」

「 リピーター率が悪いのは、いい美容師が店にいないから(条件=人)」

といった具合です。

悪い現状という、ある種の「結果」を好転させるには、「原因」=「自分」を変えるしかないのです。

しかし条件を原因だと思っている限り、自分に進歩はありません。おのずと結果もついては来ません。もちろん好条件を得る工夫を施すに越したことはありませんが、条件を変えることより、自分の考え方を変えるほうがはるかに現実的です。

賢いふとは、結果を分析しようと、屁理屈で「条件」を洗い出したりしがちですが、まずは自分の行動や考え方を振り返る癖をつけたいモノです。

 \bigtriangleupで評価するな

「成功するひとは、 \bigcirc \timesの答えしか持ってない人」という言葉が、僕にぐさっと刺さりました。

評価が \bigcirc \timesでなく、曖昧な人、例えばこんな人は、 成功できないと言います。例えば、

「どう?仕事頑張ってる?」「はい、自分なりに頑張ってます」

「結婚してどうだった?」「あ、まぁまぁです」

「毎日楽しい?」「あ、普通ですね」

という受け答えをしている人がそうです。そして、まさに自分でした。

 \bigcirc」ならば、次の目標に向けて新たな挑戦が始まります。 「 \times」ならば、自分の「原因」を深掘りし、次回の結果につなげることができます。しかし、 \bigtriangleupという、可もなく不可もなくの評価は、次のステップに繋がりません。

また、 \bigtriangleupは、自己否定がしっかりできていない人だと言えます。現状に満足していては、成長することはできません。目標を設定し、「 \bigcirc」か「\times」か、結果をシビアに評価できて初めて、成長への次の一歩が見えてくるのでしょう。

自分が主演の映画を撮っている気持ちで生きろ

現状苦労していたとしても、人生が楽しくなるコツは、自分が主演の映画を撮っているように生きることだろ言います。

映画は、山あり谷ありのドラマチックなものの方が面白いですよね。 自分の人生談も、ゆくゆく誰かに聞かせてあげたときに、 苦難の時期とそこから盛り返して手に入れた楽しい時期があったり、 誰も経験したことないような体験をしていたりする方が、きっと楽しいと思います。

彼女との約束のために、10年間休まず働き、従業員を2000人以上抱える経営者になったという國分さん半生も、 いかにも映画になりそうな、ドラマチックな人生ですよね。

広い世界の One of Them なのだと自覚し、人生が凡庸のように思えていましたが、この言葉に勇気をもらったように思います。

最後に

國分さんの趣味のひとつにサーフィンがあります。僕の故郷である千葉県鴨川市に、「鴨川サーフィンクラブ」なる施設があるのですが、実はこの建物は國分さんが建てたものでした(この本を読んで初めて知りました)。

superceo.jp

また、僕の大好きな恋愛バラエティーショー 「 バチェラー」 の、最初のローズセレモニーが行われるロケ地でもあります(バチェラー についてはまた別に記事を書きます笑)。

summer-century.com

実は友人に勧められて買った本でしたが、國分さんとのひょんなつながりを見つけたことで、より一層忘れられない本になりました。この本を読んだ経験が、僕の成功談につながるったら、楽しい映画になるなと思い、さらにモチベにつながっています。

今回紹介した教訓は、ほんの一部です。実際には64にものぼる項目が、國分さんの体験に基づいて紹介されています。この本に興味が湧いた方は、是非実物を手に取って読んでみてはいかがでしょうか。

きっとこの本との出会い自体が、あなたの人生を楽しくする「ドラマチックな体験」になると思います。

【読書記録/感想】ホリエモンの『ゼロ』がすごい!~中高生にこそおすすめの1冊~

仲の良い友人に勧められ、堀江貴文さんの『ゼロ』を(今更)読みました。 この本は、堀江さんの反省を綴った自叙伝です。 プロローグからエピローグまで、終始「働くとは何か」について書かれています。

僕は4月から社会人として「働く」ことになる身です。 今このタイミングで『ゼロ』読めたこと、本当に幸運でした。

しかしその一方、この本にもっと早く、 例えば中学生や高校生といった、 もっと若い頃に出会いたかったなとも思います。 それは、自分がスタートライン=『ゼロ』 地点に立っていることを意識するのが早ければ早いほど、 有利だからです。

この本には色々なエッセンスが凝縮されていますが、 今回は、「中高生にこそ読んで欲しい」と僕が思う見どころを、 厳選して紹介したいと思います。

ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく [ 堀江貴文 ]


感想(47件)

中学生のホリエモンが「働く」ことで得た哲学

お金のための仕事

堀江さんは、中学生の時に両親にパソコンを買ってもらい、そのときのツケを払うために、新聞配達のアルバイトをしていました(中学生は原則アルバイト禁止ですが、新聞配達に限っては許されています)。

朝が弱いのにもかかわらず、パソコン代の20万円を払うために、 朝5時台に起床して新聞配達をしていたそうです。

堀江さんの凄いところは、このアルバイトで「根性がついた」とか、「働くことの大変さを知った」という陳腐な感想でまとめているわけではなくて、 新聞配達という仕事からは「何も学べなかった」ときっぱり述べている点です。

自分が時間をかけて取り組んだことって、正当化したくなりがちですが、 何も学べなかった、とネガティブな面も客観視できることは凄いと思います。

似たような経験で、 僕もマクドナルドでアルバイトをしていたことがありましたが、 そこで学べることは思ったほど多くないなと、今では思います。

確かにマクドナルドの接客における礼節やマナーは学べましたが、 それはどこでも通用するグローバルな解であるとは言えません。

これらを無理に美化/正当化せず、 冷静に見つめ直すことが、 自分を偽らない生き方なのかもしれません(少々脱線です)。

働く意味を実感できる仕事

本題に戻ります。 堀江さんは中学生の時に、 何も学べなかった「新聞配達」のアルバイトだけでなく、 働く意味を実感できる仕事にも出会いました。

それは、塾のパソコンのシステム移植でした。

当時から大好きだったプログラミングの能力を生かし、 誰かの役に立ったことが、 達成感や誇らしさを産んだ、と述べられています。

「お金のためにする仕事」の陳腐さ、「自分の能力を生かし、誰かの役に立つ仕事」の素晴らしさ、 その二つを中学生で体験することは、 どれだけ大きな財産になるのでしょうか。 僕には計り知れません。

アルバイトを始めようとしている高校生がいたら、 まずこの本を読んで欲しい。 時給の欄だけでなく、多角的な観点から仕事を俯瞰し、 アルバイトを選ぶ経験がきっと将来生きるはずです。

現在中学生や高校生である人たちが、 この本を読めることが羨ましい。

努力ではなく「ハマる」こと

受験時代

プログラミングの魅力に比べ、 学校の勉強が馬鹿馬鹿しいと感じてしまった堀江さんは、 成績的に落ちこぼれてしまったと言います。 しかし、堀江家や地元の閉塞感から抜け出したく、 勉強して東大を目指すことに。

この時、コスパがいい英語を重点的に勉強することにし、 単語帳の英単語を端から端まで覚えていったそう。 鬼の努力だ、と思うかもしれませんが、 当の本人からしたら、努力しているというより「ハマる」、「没頭する」感覚だったと言います。

懲役期間ですら感じたやりがい

懲役のような単純な労働作業ですら、 やりがいは感じられると言います。 例えば、堀江さんの東京拘置所での最初の仕事は、 紙袋を時間内にひたすらおる仕事でした。

時間内にノルマよりどうすれば多く折れるか、 他人を見て研究したり、 自分なりの折り方を再構築し、さらに上達していく。 そうすれば、最初折れた数より、 たくさん折れるようになっていき、 やりがいを感じられるというわけです。

やりがいとは、どこかに転がっているものと思いがちですが、 実は、自分で創意工夫し、 上達していく過程で得られるものなのではないでしょうか。

仕事や勉強がつまらないなぁという人は、 目の前の「作業」に目を向け、工夫を凝らし、 昨日の自分より一歩上達する気持ちで日々を生きれば、 きっと向上できるはずです。

誰かではなく、自分が作った「ルール」に従う

何かに「ハマる」、没頭するために必要なことは、自分でルールを作ることだと言います。誰かに能動的にやらされている作業はやる気が出ないものです。

だからこそ、自分が1日でギリギリ達成可能な目標/ルールを作り、自分に課すことが大切です。自分で立てた目標/ルールだからこそ、納得感を持って取り組めるし、そのルールに従って成長していく自分を感じられたら、没頭のスパイラルはきっと、正の方向に加速していくことでしょう。

親子のつながりと自立

親子関係を大切にすることとは

『ゼロ』では、堀江さんが育った堀江家の説明に紙幅が割かれています。 愛情表現が苦手な仕事人間だった父から、服役中に手紙が届いたそうです。

いろいろ大変なこともあるだろうけど、がんばれ。

この一文に、僕は感情が揺さぶられました。 堀江家の親子関係のすべてのコンテクストを知っているわけではありませんが、息子の身に何があっても、そっと背中を押してくれる父という存在に、どこか暖かみを覚え、僕は不覚にもホロリと涙してしまいました。

親から自立するとは

しかし、堀江さんは、そんな父の手紙に返事を出さなかったそうです。 返事をしてしまうと、泣き言を言ってしまいそう、そうすれば、親から自立した大人でいることはできない。

経済的に自立することや、一人暮らしを始めることだけでなく、 自分の生きていく道が、親とは独立したものなんだと覚悟をすることが、親からの真の自立なのだと思いました。

「0」に「1」を足すこと

この本で強調されていることは、本のタイトルにもなっている、 『ゼロ』というスタートラインです。

ここからは、僕の解釈も交えて、 『ゼロ』という地点を考えていきたいと思います。

スタートラインから一歩踏み出すこと

何かに挑戦する(スタートラインの)自分の地点は「0」。 そこから、成功者(少なくとも0ではない地点に立っている人)の猿真似をしようとするのは、0に何か他の数字をかけるようなもので、結局自分の立ち位置は0のまま。

大事なのは、ゼロであることを自覚し、 小さいながらも一歩踏み出して前に進むこと。

そしてその一歩が、積み重なっていくことで、 気づいた時には何者かになっているのではないでしょうか。

僕の好きなバンドである、BUMP OF CHICKENの『カルマ』という曲の歌詞に、

知らなきゃいけないことは、どうやら1と0の間

というものがあります。

数直線上で目盛りが降ってあるのは、大体整数部分です。 1,2,3,・・・と数直線は続いていくけれど、0と1の間にある小さな数たちには、あまり目が向けれられません。 でも、本当に大事なのは、そういう0と1の間にある物事なのでしょう。

地道にこそ隠れている近道

よく、人生遠回りしろ、みたいなことを聞くこともあります。

この言葉を『ゼロ』的解釈で言うなれば、 スタートラインで右往左往しながら近道を探す前に、まずは一歩を踏み出し、 地道に一歩ずつ歩いていけ、ということなのだと思います。

数日前に読んだ、働き方の損益分岐点も、「土台を積み上げろ」という同じような結論で締めくくられていました。

slmnphmet1-2.hatenablog.com

僕で例えると、新入社員という社会人の『ゼロ』に立っているわけです。 そのことを忘れず、目先の結果や勝ち負けに振り回されることなく、積み上げていく自分でありたい、そう思えました。

最後に

この本は、堀江さんの半生を綴った自叙伝です。 今回かいつまんで取り上げた内容以外にも、 母親に包丁を突きつけられた話や、 東大の学生寮時代のアルバイト等、 衝撃的かつ刺激的なストーリーが満載です。

この記事で興味を持たれた方、もう一度読み返そうと思われた方は、 是非本を手に取ってみてください。

歌舞伎町のホストクラブに体験入店してきました~後編~

この記事は、 の続きの内容となります。 前編を読んでない方はこちらからどうぞ。

前回までのあらすじ

ホストクラブの人事担当に、新宿で声をかけられ、体験入店をすることに。店がうまい汁を吸う為の給与制度や、女絡みの人間関係が何とも度し難い人事長の存在に辟易しながらも、トークが上手く、頼れる先輩ホストKに惹かれ、ホストの生態系について、より詳しく知るべく、体験入店の2日目を決意。

体験入店2日目

体験入店1日目から3日後、再び歌舞伎町に赴き、2日目の体験入店を経験することに。

まず最初にテーブルマナーについて簡単に講習を受け、先輩ホストを客に見立てて実習をしました。

その後、店で一番売れているホストRと話し、ヘルプとして実際にテーブルにつかせてもらいました。

テーブルマナーを教わる

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この日テーブルマナーを教えてくれたのは、Mという22歳の新人ホスト。ホストをする前は工場勤務をしていたが、工場での単純労働に嫌気がさし、ホストをしていた高校時代の友人Rの紹介で、入店することになったそうです。

テーブルでの作法は、思っていたより細かく、一つ一つ覚え完璧にするのは、たやすくないと感じました。例えば、おしぼりの折り方や、氷の入れ方、グラスのかき混ぜ方。これらひとつ一つにちゃんとした作法があります。

また、姫(お客さん)への配慮についても、いくつか覚えておかねばなりません。例えば、席についてとき、当たり前ですが、名を名乗り、「飲み物をいただいていいですか?」と聞く。席を立つときも、同様に決まった文句で挨拶をする。

細かい作法や注意点も多いですが、「このような気配りをされたら女性は嬉しいだろうな」、と思うものばかりでした。また、ホストという仕事以外でも、女性との食事等で役に立ちそうなマナーが多く、素直に有意義な実習だと感じました。

Mはホストを工場勤務を行なっていたためか、手先が器用で手際も良く、氷の入れ方一つにしても、どことなくかっこよさが感じられます。ルックスやトーク技術だけでなく、ホストのこのような一面に惹かれる姫も少なくないのでは?

店の売れっ子ホストRと対談

Mの高校時代の友人のRというのは、なんとこの店のNo.1 の売上実績を誇る幹部ホストでした。しかも顔がKis-myFt2の藤ヶ谷に似ていて、No.1なのも納得です。

実は彼とは15分程話していたのですが、Rの身の上話等は全く記憶に残っていません。

おそらくそんな話はしてなかったのだと思います。むしろ、Rは、「相手に話させる」ことが格段にうまく、質問をしている側だったはずの僕が、知らず知らずのうちに気持ちよく自分の話をしていました。これがNo.1ホストの実力か、と思うと脱帽です。

それにしても、MもRも、僕より3つ年下なのに、なぜか頼り甲斐満載笑。

いざ接客

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この日は、お客さんが少なかったということもあり、一人の姫とその担当のテーブルに、5〜6人のヘルプが着くという、逆ハーレム状態のテーブルが出来上がっていました。そこに体験入店の僕も放り込まれることになりました。

まず、第一声は、自己紹介を含めた姫への挨拶。名前を名乗り、席についていいかを尋ねます。その後、姫に飲み物を貰ってもいいか聞き、自分の分のお酒を作ります(といっても氷を入れて注ぐだけ)。

テーブルに大人数が集まったということもあり、唐突に飲み会ゲームが始まりました。ここから一気に僕のホストへの興味が冷めることになります。

ホスト側がやたら盛り上がっていましたが、姫はついていけず眠そうにしていて...。負けた人が缶に穴を開け一気するという、大学生の飲み会みたいな悲惨なノリになりました。

ここで、「女の金でお前らが楽しんでて、ホストとして仕事をしていると胸を張っているのか?」と思いました。Youtubeやその他メディア媒体を通して見る、ローランドや社美緒のような、筋が通った生き様を感じることはなく、お世話になったはずのKやMにさえ、もはやただのチャラい若者に感じられてしまいました。

入店を断りました

最後に店長(この人も元ホスト)と面談をしました。

店長 :「で、どうする〜?入店する?」

僕 : 「ひとつ聞きたいことがあります。」

店長 : 「ん?」

店長は怪訝そうな顔をします。

僕 : 「さっきみたいに、女性のお金で男が飲み会ゲームみたいなことしてて、お客さんは本当に楽しいんですか?」

店長 : 「楽しいやろな?」

だ〜めだこりゃ。

僕 : 「僕はここには入りません。」

スタッフがスタッフなら店長も店長だと思いました。 ホストといえど、著名だったり売れている人には、それなりの理由があるはず。

店長も含め、彼らにはそんな理由が微塵も感じられませんでした (ただ、Rはマジでイケメンでした)。

ホストクラブも色々あるみたい

しかし、帰宅後ネットで調べて見ると、有名どころの店舗は接客についての評判が良かったり、多いところではお客さんの来場数が多かったりと、ホストクラブにもいろいろあるんだなと思いました。

接客が良くないのは、今回体験に行ったところ限定で、それが理由で客が少なく閑散としていた、というだけのことかもしれません。1店舗の体験入店に参加しただけで、歌舞伎町のホストクラブを語ろうとするのは、甚だおこがましいことでしょう。

最後に

そんなこんなで、歌舞伎町のホストクラブの体験入店に行ってきた話でした。 ローランドのように筋の通ったかっこいい生き方をしている人もいれば、そうでない人もいます。かっこいいホストに巡り合うのも、そんなに簡単じゃないのかもしれません。

入店希望の人(読者にいるかどうかは置いておいて)や、ホストクラブに遊びに行こうと考えている女性は、是非参考にしてみて下さい。