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【測度論】完全加法族と測度の定義・意義

最近ちょっと測度論をかじっているので、勉強したことの備忘録程度に、測度の定義について書いておこうと思います。

まず、測度を定義する前に、集合族という概念と、完全加法族を導入します。

集合族の導入

Xの集合族\mathscr{E}とは、X部分集合の集まりのことです。 例えば、 X = \{x| x = 1,2,3 \} とします。Xは整数1,2,3からなる集合という意味を持ちます。 この時、Xの集合族\mathscr{E}には、次の様なものが考えられます。

 \mathscr{E} = \{ \{\Phi \},  \{ 1 \}, \{ 2 \}, \{ 3 \},
\{ 1, 2 \}, \{ 1, 3 \}, \{ 2, 3 \}, \{ 1, 2, 3 \}
\}\tag{1}

これは、Xの部分集合を全て含んでいます。 他には、

 \mathscr{E} = \{ \{\Phi\}, \{ 1 \},
\{ 1, 2 \}, \{ 1, 3 \}
\}\tag{2}

の様に、もっと小さい\mathscr{E}も考えられます。

(1)の様に、Xの部分集合の考えられる組み合わせを全て含む場合、   \mathscr{E} Xの部分集合の全体と呼びます。

完全加法族( \sigma-algebra)

定義

さて、完全加法族と言うからには、これも集合族なわけです。 あるXの集合族  \mathscr{T} が、以下の2つを満たす時、   \mathscr{T} 完全加法族であると言います。

( I )    E \in \mathscr{T} ならば、 E^{c}  \in \mathscr{T}

( II ) 
\displaystyle{
 \bigcup_{j=1}^{\infty} E_j \in \mathscr{T} (E_1, E_2, \cdots , \in  \mathscr{T} )
}

( I )は、集合族  \mathscr{T} に入っている全ての集合について、補集合が  \mathscr{T} の要素であることを意味します。 ( II )は、集合族  \mathscr{T} 内の集合のinfinite unionが  \mathscr{T} に入っていることを意味します。

( I )や( II )が成り立たない例を見てみましょう。

例えば、先ほどの例に戻り、   \mathscr{T} =  \{ \{ 1 \},
\{ 1, 2 \}, \{ 1, 3 \}
\} としてみましょう。実は  \mathscr{T} については、 ( I )も( II )も成り立っていません。

( I )については、集合 \{ 1,2 \} の補集合である \{3\}が、   \mathscr{T} に含まれていないことからも明らかでしょう。 また、( II )については、infinite union である、 \{1,2,3\}が、   \mathscr{T} に含まれていません。

しかし、  \mathscr{T} が、集合  Xの全体となっている時は、 ( I )と( II )が成り立ち、  \mathscr{T} は完全加法族となります。

定義から導かれる性質

定義( I )と( II )から、次の様なことが導かれます。

( III )  \displaystyle{
\bigcap_{j=1}^{\infty}  E_j   \in \mathscr{T}
} (E_1,E_2 \cdots, \in \mathscr{T})

これは、ド・モルガンの法則と( I ),( II )より従います。 [tex: Ec]が mathscr{T}に含まれること、それらのinfinite unionが mathscr{T} に含まれることを利用します。 すなわち、


\displaystyle{ \bigcap_{j=1} ^{\infty}  E_j  =  \
\left( \
\bigcup_{j=1}^{ \infty } E_j ^c  \right)^c \
} \in \mathscr{T}

です。

また、次のことも言えます。

( IV )  E,F \in \mathscr{T} \rightarrow E -F \in \mathscr{T}

これは、差集合の定義から、 [tex: \displaystyle{ E -F = E \cap Fc } ]

と表され、  F^c \in \mathscr{T} ( \because ( I ))と、( III ) を用いることで示されます。

また、 \Phi = E -E , X = \Phi^c から、

( V )  \Phi \in \mathscr{T}, X \in  \mathscr{T}

が成り立ちます。 以上、( I ) ~ ( V )は、完全加法族について重要な点です。

測度の定義

測度は、完全加法族とセットで定義されます。 実は測度とは、完全加法族内の集合を実数値に変換する写像なのです。

 \mathscr{T}を、集合 X上の完全加法族とします。 写像  \mu : \mathscr{T} \rightarrow [0, \infty ] が次の2つの条件を満たす時、  \mu  \mathscr{T}上の測度と呼びます。

( i )  \mu(\phi) = 0

( ii ) 互いに交わらない集合列  E_1 , E_2, \cdots, に対して 
\displaystyle{
\mu
\left(
\bigcup_{j=1}^{\infty}
E_j
\right)
= \sum_{j=1}^{\infty}
\mu
\left(
E_j
\right)
}

( i ) が意味するところは、空集合を0に写す写像であること。これは簡単。 ( ii ) が意味するところは、同じ要素を含まない集合ならば、 和集合の測度を、個々の測度の和で表現できるということです。

測度はルベーグ積分の勉強に欠かすことができませんが、 どことなく積分っぽさを感じますね。 リーマン積分ですと、( ii )の左辺の()の中身が、 微小な短冊が作る領域に該当していて、  \mu(\cdot)がその面積を表していると考えていいでしょう。 一方右辺の方は、微小な短冊の面積の和です。

この様に、 測度とは、集合(領域も点の集合である)に面積や体積の様なものを与える写像であることがわかります。

測度空間

集合 X X上の完全加法族 \mathscr{T}、測度 \muを合わせて、測度空間と呼びます。 おまけ程度に。

測度ってなんのためにあるの?

リーマン積分では、ユークリッド空間内の領域の体積を計算していましたが、 測度を定義することで、ユークリッド空間から離れて、一般の集合にも、面積や体積の様なものを定義することができます。

確率密度も、実は測度として定義されるます。 みなさん一度は不思議に思ったことがあるであろう、「ある一点における確率密度が0である」理由も、 測度論を学べば理解できる様になります。

測度論を学ばなくても統計の勉強はできると思いますが、  測度論を学べば確率や統計ともっと仲良くなれるのではないでしょうか。

私もまだ道半ばですので、勉強に戻りたいと思います。ではまた。