【測度論】外測度の定義と測度の構成~式とイメージによる理解~
前回、完全加法族を導入し、 「測度」というものを定義しました。
今回は、「外測度」を定義し、 ある条件下の外測度が、測度になることを学びます。
外測度の定義
を、上の部分集合全体からなる集合族とします (集合族については、前回の記事を参照ください)。 この時、写像 ] が外測度であるとは、次の性質を満たす時を言います。
(i).
(ii). ならば、
(iii). Xの集合列、 に対して、
これも、測度と同様に、集合に「体積のようなもの」を定義するための枠組みです。 (i)は、空集合に体積がないことを表しています。 (ii)は、大きな集合の方が体積(外測度)も大きいということを表しています。 (iii)は、「和集合の体積(外測度)」は、「体積(外測度)の和」であることを表しています。
可測集合
ある上の外測度があったとします。 の部分集合が、 「可測」もしくは、 「可測集合」であるとは、 以下を満たす時を言います。
st以下が言わんとしていることは、 「の体積(外測度)は、 との共通部分の体積(外測度)と、 からとの共通部分を引いた部分の体積(外測度) の和」であるということです(逆にややこしい)。 「」内の主張が、のどんな部分集合についても成り立つとき、が可測となります。
下線部を図で説明すると、
このようなイメージです。例えば2次元のユークリッド空間において、 「体積」を「面積」に置き換えて考えれば、 下線部の主張は、 ごくごく当たり前のように見えます。
しかし、ユークリッド空間を離れた一般の集合で、 体積ではなく外測度を考えている場合には、 必ずしも成り立つ主張ではありません。
一般人が体積をイメージできるのは、概ねユークリッド空間の中ですが、一度ユークリッド空間を離れると、一般人が想像だにしない現象が起こります。測度論の難しくも興味深いところですね。
外測度による測度の構成
外測度と、可測の概念がわかれば、 完全加法族という言葉を使わなくても測度を定義することができます。
を外測度とします。 今、の可測集合の全体をとおきます。この時以下が成り立ちます。
- は完全加法族である。
- に対して、 と定義すると、は上の、完備な測度である。
一言で言うと、「可測集合における外測度は、完備な測度」ということです。測度空間の完備性については、後日別の記事で紹介予定です。
また、この定理の証明は、行程が複雑なため、これもまた別の記事で紹介予定です。
まだ、外測度が何者なのかイメージがつかみにくいと思います。 次回は、「拡張」と言う概念を用いて、外測度と測度の関係について、より理解を深めていきたいと思います。