【測度論】測度空間と完備性
体積とは、ユークリッド空間における領域に、実数値を与える写像で。 同様に、測度とは、一般の集合に実数値を与える写像です。 測度が、完全加法族上で定義されることを、以前別の記事で学びました。
本記事では、測度空間に どのようなものがあるのかを学びます。
そして、後に登場する外測度と測度の関係を理解するために、 測度空間の完備性という概念を導入します。
それでは早速。
測度空間の例
ここでは、 集合、の集合族、 上の測度からなる対を、 と表現し、「測度空間」と呼びます。
測度空間の例をいくつか示します。
確率空間
の時、を確率測度、 測度空間を、確率空間と呼びます。
ポアソン分布を例に、確率測度と確率分布の関係考えてみましょう。 ポアソン分布に従う確率変数は自然数ですから、 となります。 また、は、 「の部分集合の全体」となります。
この時、に対して、以下のようにおきます。
二本目の式は、
見慣れたポアソン分布の確率質量関数ですね。
実はこの時、は、測度となっています。 測度の定義は以下を適宜参照してください。 slmnphmet1-2.hatenablog.com また、
であり、全空間の測度が1であることから、 確率空間であることも確認できますね。
ディラック測度
ある集合に対して、、を考えます。 この時、
とを定義すると、X、Xの部分集合の全体、 の3対は測度空間となります。 また、この時のを、ディラック測度と言います。
この測度空間もまた、確率空間となっています (ディラック測度で、E内とE外の測度の和が1になることから明らか)。
数え上げ測度
、 は、「の部分集合の全体、 を、Xの部分集合Eに含まれる自然数の数とすると、 これら3対は、測度空間を成します。
また、この時のは、数え上げ測度と呼ばれます。
これらが測度空間になることは、 集合族が完全加法族であることと、 が測度としての定義を満たしていることから確認できます。
完備な測度空間
集合[tes: X]と、上の完全加法族、測度 が、 完備な測度空間であるとは、「 零集合(によって「0にうつされる集合)すべての部分集合が、 完全加法族の要素である 」 ときを言います。
数学の言葉で厳密に定義すると以下のようになります。
「 かつ、 ならば、 なるすべてのXの部分集合Fに対して、 」
ではありますが、が必ずしも 成り立つとは限りません(想像しにくいけど)。
完備性は、後に導入する「ルベーグ測度」 の性質を知る上で大切です。 この機会に頭に入れておくと、 のちの理解のためになるかと思います。 ではまた!