【読書記録/レビュー】『働き方の損益分岐点』がすごい!〜社会人1年目の給料の教科書〜
コロナウイルスの影響で外出を自粛していると、読書が捗りますね笑。
さて、今回紹介するのはこの本です。 4月から社会人になる身ですが、このタイミングで巡り会えたことに心から感謝です。
人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点 (講談社+α文庫) [ 木暮 太一 ]
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『働き方の損益分岐点』。サイバーエージェントやリクルートで勤務していたこともある、木暮太一さんの本です。小暮さんはマルクスの『資本論』や、ロバート・キヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』に影響を受け、より充実した生活をするためにはどうすれば良いか、考えるようになったそうです。
しかし、すぐさま経営者になりバリバリ稼げるわけでもなく、、、。一般人は一般人なりの、企業に従事しながら生活水準を上げるための方法を追い求め、この本にあるような方法にたどり着いたそうです。
世にある自己啓発本や、いわゆる「不労所得を増やそう」系の本と比べて、現実的かつ実践しがいがある内容だと思います。興味がある方は是非手に取ってみて下さい。
価値と使用価値の違い
世の中では、使用価値も含めて、価値という言葉があてがわれますが、資本論では使われ方が異なります。「使用価値」とは、一言で言えば有益性で、「使用価値があるもの」とは、その商品(財であれサービスであれ)を使うことで消費者にメリットがあるものを言います。 一方、「価値があるもの」とは、商品を生産するために必要な手間やコストがかかっているものだと言うのです。
空気を例にとって考えてみましょう。人間は空気のおかげで生きていけるので、確かに「使用価値」は高いのですが、そこらへんに漂っている空気に生産コストはかかっていないと考えられるので、「価値」は低いものであると言えます。
そして資本主義の枠組みにおいて大事なことは、商品の値段のベースは、「使用価値」ではなく、「価値」に基づいて決まっているということです。
もちろん使用価値が需要と供給のバランスに影響し、値段が変動することはあります。しかし、いくらコロナショックで需要が爆発しているとはいえ、トイレットペーパー1ロールの価格が六本木のビル1棟の価格より高くなることはないでしょう。これは、いくらトイレットペーパーに「使用価値」があっても、「価値」がなければ価格が高くならない良い例です。
給料 = 報酬ではない!
さて、この本の序盤では、「給料=報酬ではない」という内容に1/3程度のボリュームが割かれています。 僕も含め、お金について知見を持っていない人は、給料は頑張って仕事をした時間に対する「報酬」だと勘違いをしがちです。 しかし、給料=報酬の関係がが成り立つとしたら、営業成績が2倍になったサラリーマンの年収が昨年の2倍になっているはずです。しかし実際の資本主義の世界ではそんなことは滅多に起きない。こんな簡単な例からも分かる通り、
給料=報酬ではないのです。
それでは、給料の正体とは一体何なのでしょうか。
給料とは、ずばり「労働」の「価値」です。 価値とは、先ほど見たように、商品を作り出すために必要な手間やコストで決まっています。「労働」を一つの商品だと思えば、給料とは、「労働」を作り出すために必要なコスト、すなわち、企業で来る日もくる日も働き続けるために必要な「再生産コスト」でしかないのです。
資本主義社会では、対して会社に貢献していない年配社員が、活力を持って仕事をし、会社に貢献している若手社員よりも多い給料をもらっていると言うことが多々あります。給料が、労働の再生産コストであることを考えれば、この点も説明がつきます。歳を重ねると、結婚や出産を通して家族が増え、生活を維持するために必要な出費が大きくなります。そのため、明日も明後日も労働をしてもらうための再生産コストが高くなっているのです。
昇給のために働くということ
ですので、「頑張って働いてたくさん給料をもらおう」という働き方が、資本論の観点からは理にかなっていないことがわかります。
頑張って働いたところで、その人の再生産コストすなわち「価値」は上がらないので、給料は一時的なボーナスによる微々たる額しか増加しないことでしょう。
しかし、多くの日本人は給料=報酬という妄想に囚われ、頑張って働けば給料が増えると思い込んでいます。だからこそ夜遅くまで残業したり、小技が陳列したビジネス書を買い込んだりするのでしょう。
そして企業から、再生産コストから逆算された「給料」を使い、仕事のストレスを解消するために不毛な飲み会に勤しみ、気づけば老後を迎える、、、。なんと恐ろしい資本主義のカラクリでしょう。
自己収益という考え方
それでは、どのようにすればこのような生活から抜けられるのでしょうか。その答えは、お金ではなく、その人にとっての「人生の利益」、すなわち「自己内利益」を最大化することにあります。
利益とは、あたりまえですが、収益から損益を引いた金額のことです。
「利益」 = 「収益」-「損益」
同様に、自己内利益とは、自己内の収益-自己内の損益カラ計算されると考えられます。この本では、自己内の利益を「満足感(昇進・昇級から得られるメリット)」、自己内の損益を、「必要経費(肉体的・時間的労力や精神的苦痛)」と定義しています。
満足感を変えず、必要経費を下げる
労働時間を減らすには限界があります。満足感を変えずに、必要経費を下げるためにこの本で強調されていることは、「精神的苦痛を感じない仕事」を選ぶことです。
給料と言う再生産コストの中には、精神的エネルギーの補填、平たく言うなればリフレッシュ用の再生産コストも含まれています。ですが、仕事にストレスがなく、リフレッシュが必要でなければ、その分収益は高くなるという理屈です。
必要経費を変えず、満足感を増やす
そして、満足感(昇進・昇級から得られるメリット)を増やすために大切なことは、自分が培ってきた能力を生かすことです。知らず知らずのうちに、前職や部活や日々の趣味などを通して、知らず知らず培ってきた土台が必ずあるはずです。それを生かして仕事をすれば、ただ頑張って仕事をしている時よりも高い場所に手が届くだろうと述べられています。
労働力の価値を上げる
また、過去に培ってきた土台を利用するのではなく、土台に積み上げを行っていくことも重要です。この土台が高ければ高いほど、その人の労働力を生産するためのコスト、すなわち「労働力の価値」が高まるので、労働力の価格に基づいて決まっている給料も自然と高くなると言うわけです。
しかし、目先の結果に目が眩んで、長期的な土台づくりに勤しむことができる人は少数です。これは、PL(損益計算書)的な思考が強く、BS(バランス)的な発想が足りていないためだと言います(『金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラント』を読むと、違いがよくわかる)。BS的な考え方ができれば、土台という資産を作るための時間がいかに大切か分かるはずです。
要約とまとめ
極論(かなり薄っぺらい言い方)でまとめると、
- 頑張って働いても、給料は上がらない。
- ストレスが少ない仕事を選べ
- 自分の能力を生かせ
- 自己投資で土台を築け
ということでしょうか。しかしこれはあくまで、具体例や細部の説明を交えて丁寧に説明された本の内容を、4行でまとめたものです。本来はもっと濃くて重要な部分がたくさんありますので、是非この記事だけでなく、実際にこの本を読んで、成功のための土台の一段にしてみてはいかがでしょうか。
それでは!